納棺とは?手順や費用を解説・エンバーミングとの違い

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2024/06/07
納棺とは?手順や費用を解説・エンバーミングとの違い

大切な人を亡くした喪主にはやらなければならないことが次々と押し寄せ、心が休まる間もないかもしれません。そんな中でも、故人との最後のお別れの儀式である「納棺」は、とても大切な意味を持っています。しかし、納棺とはどのような儀式なのでしょうか。また、どのような手順で行われ、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。本記事では、納棺について詳しく解説するとともに、よく混同されるエンバーミングとの違いについても触れていきます。故人を心を込めて送り出すためにも、ぜひ参考にしてみてください。

納棺とは何か

納棺とは、故人の遺体を棺に納める儀式のことです。亡くなった方を清め、あの世への旅立ちに向けた準備を行い、大切な副葬品とともに棺におさめるという、葬儀の中でも重要な儀式の一つとなります。

納棺の定義と目的

納棺の主な目的は、以下の通りです。

  1. 故人の遺体を清め、あの世への旅立ちに備えること
  2. 遺族が最後のお別れをすること
  3. 副葬品を棺に納め、故人の旅立ちを助けること

納棺の手順は、宗教や地域によって多少の違いはありますが、一般的には以下のような流れで行われます。

手順内容
1. 末期の水亡くなる直前に口元に水を含ませる儀式
2. 湯灌(ゆかん)遺体を清め、着替えさせる
3. 死化粧故人の顔に化粧を施す
4. 死装束の着付け納棺用の衣装に着替えさせる
5. 副葬品の納め棺に思い出の品などを一緒に納める

これらの一連の儀式を通じて、故人はあの世へと旅立つ準備が整えられるのです。

納棺を行うタイミングと立ち会う人

納棺は通常、通夜の前に行われます。立ち会う人は、故人の近親者が中心となりますが、親しい友人や職場関係者など、故人と近しい間柄の方が参列することもあります。

参列者は原則として喪服を着用し、厳粛な雰囲気の中で故人を見送ります。近親者は泣き崩れる方も少なくありませんが、それもまた故人への深い愛情の表れと言えるでしょう。

宗教による納棺の違い

納棺の具体的な方法は、宗教によって異なります。

  • 仏教では、死装束は白い着物か経帷子(きょうかたびら)を着せることが多い。
  • キリスト教では、納棺時に十字架を棺に入れることがある。

ただし昨今は、宗教にこだわらず故人の好物や思い出の品を納める例も増えています。枕元に花や写真を飾り、棺には手紙やぬいぐるみ、菓子などを入れるご家族もいらっしゃいます。大切なのは、故人とのお別れの儀式という納棺の本質を踏まえつつ、故人らしさが感じられる納め方をすることではないでしょうか。

以上が納棺の基本的な知識となりますが、大切なのは納棺を通じて、亡き人との最後の時間を過ごすことです。心を込めて故人を送り出し、悲しみを乗り越えていければと思います。

納棺の手順

納棺は、故人をあの世へ送り出す大切な儀式です。ここでは、一般的な納棺の手順について詳しく解説していきます。

末期の水と湯灌(清拭)

納棺の第一段階は、「末期の水」と呼ばれる儀式から始まります。これは、臨終間際の方の口元に水を含ませ、最期の瞬間を清めるという意味合いがあります。

続いて、遺体を清める「湯灌(ゆかん)」の儀式が行われます。湯灌では、白湯や清水で遺体を丁寧に拭き、汚れを落とします。この際、故人の髪の毛や爪なども整えられます。近年は、湯灌を省略したり、家族のみで行ったりするケースも増えています。

死化粧と死装束を着せる

遺体が清められた後は、「死化粧」が施されます。生前の故人の姿に近づけるよう、メイクが施されるのです。死化粧は、専門の納棺師が行うのが一般的ですが、家族の手によって行われることもあります。

化粧が終われば、いよいよ死装束を着せます。死装束は、故人があの世へ旅立つ際の正装とされています。宗教によって異なりますが、仏教では白装束や経帷子、神道では白い着物や帷子と麻の帯を使うことが多いようです。

副葬品を納める

納棺の最後の段階は、棺に副葬品を納めることです。副葬品は、故人にゆかりのある品や、あの世での生活に必要と考えられるものが選ばれます。

よく見られる副葬品としては、以下のようなものがあります。

  • 数珠や経典(仏教)
  • 十字架やロザリオ(キリスト教)
  • 折り紙で作った花や鶴
  • 故人の思い出の品(写真、手紙、ぬいぐるみなど)
  • 故人の好物(菓子、酒など)

副葬品を納め終われば、いよいよ棺のふたを閉じます。直接手を合わせて最期のお別れをした後、棺に納めた故人は、通夜や告別式、火葬へと送られていくのです。

以上が一般的な納棺の手順となります。故人との最後の時間を過ごす、とても大切な儀式です。宗教や地域、家庭によって多少の違いはあるものの、故人を丁寧に清め、あの世へ送り出すという思いは共通しているのではないでしょうか。

納棺に必要な費用

納棺に必要な費用は、大きく分けて湯灌(ゆかん)、死装束、死化粧の3つの項目があります。ここでは、それぞれの費用の相場と、オプションについて解説していきます。

湯灌にかかる費用

納棺の第一段階である湯灌は、遺体を清め、汚れを落とす重要な儀式です。湯灌にかかる費用は、地域や葬儀社によって異なりますが、おおむね5万円から15万円程度が相場となっています。

最近は、家族のみで湯灌を行う「家族湯灌」も増えています。費用を抑えたい場合は、家族湯灌を選ぶのも一つの方法です。ただし、遺体に触れる作業となるため、心構えが必要となります。

死装束の費用

湯灌の後は、死装束を着せる段階となります。死装束の費用は、素材や デザインによって大きく異なります。

比較的安価なものだと数千円程度で購入できますが、高級な絹製のものになると数万円から10万円以上するものもあります。死装束は、故人があの世へ旅立つ際の正装と考えられているため、故人の好みや信仰に合わせて選ぶことが大切です。

最近は、死装束のレンタルサービスを行っている葬儀社もあります。購入するよりは費用を抑えることができるので、検討してみるのもよいかもしれません。

その他オプションの費用

納棺には、湯灌や死装束以外にもオプションがあります。

例えば、「死化粧」は、専門の納棺師が施す特殊なメイクです。生前の面影を再現するため、別途料金が発生します。対面式の葬儀であれば、死化粧は欠かせませんが、最近は家族のみで行う「お見送り化粧」を選ぶ方も増えています。

また、納棺に立ち会う人数が多い場合は、式場使用料や、ドライアイスの費用など、別途料金が発生することがあります。事前に葬儀社に確認しておくことをおすすめします。

以上のように、納棺にかかる費用は、地域や葬儀社、オプションの有無によって大きく異なります。事前に疑問点を解消し、故人にふさわしい納棺を行えるよう、準備を進めていきたいものです。

納棺とエンバーミングの違い

納棺とよく混同されるのが、「エンバーミング」という言葉です。エンバーミングとは、遺体の腐敗を防ぐための防腐処理のことを指します。主に欧米で行われている習慣で、日本では一般的ではありません。ここでは、エンバーミングの定義や目的、納棺との違いについて詳しく解説していきます。

エンバーミングの定義と目的

エンバーミングとは、遺体の血液を抜き取り、防腐剤を注入することで、一時的に遺体の腐敗を防ぐ処理のことです。エンバーミングが施された遺体は、数日から数週間は腐敗することなく保存することができます。

エンバーミングの主な目的は、以下の通りです。

  • 遺体を衛生的に保つこと
  • 遺体の容姿を整えること
  • 感染症のリスクを減らすこと
  • 葬儀までの間、遺体を安置できるようにすること

つまり、エンバーミングは遺体の一時的な保存が目的であり、遺族の感情的な面というよりは、実用的な側面が強いと言えます。

納棺との手順や内容の違い

エンバーミングと納棺は、遺体に対する処置という点では共通していますが、その目的や手順、内容は大きく異なります。

納棺が故人を清め、あの世へ送り出すための儀式であるのに対し、エンバーミングは遺体の一時的な保存が主な目的です。納棺では湯灌や着替えなどの儀式的な要素が強いのに対し、エンバーミングは医療的・科学的な処置が中心となります。

また、エンバーミングは専門の資格を持った「エンバーマー」によって行われるのが一般的です。血液を抜き取り、防腐剤を注入する工程には、一定の知識と技術が必要とされるためです。一方、納棺は葬儀社のスタッフや遺族によって行われることが多く、特別な資格は必要ありません。

納棺エンバーミング
目的故人を清め、あの世へ送り出すこと遺体の一時的な保存
主な内容湯灌、着替え、化粧など血液の入れ替え、防腐剤の注入など
執り行う人葬儀社スタッフ、遺族など専門の資格を持ったエンバーマー
所要時間1〜2時間程度数時間〜十数時間

このように、エンバーミングと納棺は、遺体に対する処置という点では共通していますが、その目的や内容は大きく異なっています。日本で一般的に行われているのは納棺であり、エンバーミングはまだ一般的ではありません。

エンバーミングのメリットとデメリット

エンバーミングにはメリットとデメリットがあります。メリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 遺体を衛生的に保つことができる
  • 故人の容姿を整えることができる
  • 感染症のリスクを減らすことができる
  • 葬儀までの間、安置することができる

特に、死因が感染症だった場合や、海外から遺体を送還する場合など、遺体を一定期間保存しておく必要がある場合には、エンバーミングが有効な手段となります。

一方でデメリットとしては、以下のような点があります。

  • 処置に時間と手間がかかる
  • 費用が高額になる場合がある
  • 環境への負荷が大きい(防腐剤の使用など)
  • 故人への最後の別れという意味合いが薄れる

日本では、遺体を長期間保存する習慣がないため、エンバーミングの必要性は低いと言えます。むしろ、故人との最後の別れを大切にする文化的背景から、納棺が一般的な習慣として定着しているのです。

ただし近年は、グローバル化の影響もあり、エンバーミングを取り入れる葬儀社も徐々に増えてきています。宗教や文化、故人や遺族の意向を踏まえつつ、ケースバイケースで適切な方法を選択することが大切だと言えるでしょう。

以上、納棺とエンバーミングの違いについて解説してきました。エンバーミングは欧米では一般的な習慣ですが、日本ではまだ浸透しているとは言えません。納棺とエンバーミング、それぞれの長所を理解した上で、故人や遺族にとって最良の方法を選択していくことが肝要ではないでしょうか。

まとめ

納棺は、亡くなった方の体を清め、あの世への旅立ちの準備を整える大切な儀式です。湯灌で体を清め、死装束を着せ、副葬品を棺に納めることで、故人を心を込めて送り出します。一般的な納棺の費用は、湯灌で5〜15万円、死装束で数千円〜数万円程度かかり、ご希望により死化粧も追加料金で行うことができます。一方、エンバーミングは欧米で行われる防腐処理で、遺体の一時保存を目的とした医療的処置です。日本では馴染みが薄く、あくまで故人のお見送りが目的の納棺とは異なります。



監修 角田(株式会社葬儀のこすもす)

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