リビングウィルの基礎知識|作成方法から法的効力まで徹底解説

あなたの大切な人が意思表示できなくなったとき、どのような医療を望むかわかりますか?多くの人は、回復の見込みがない状態で延命治療を続けられることを望んでいません。この記事では、「生前の意思」を示すリビングウィルについて、基本的な知識から作成方法、そして運用上の注意点まで詳しく解説します。リビングウィルを作成することで、その人らしい最期を迎えるための準備を始めることができるでしょう。
リビングウィルとは何か
リビングウィルとは、「生前の意思」を意味する文書のことです。患者本人が元気なうちに、延命治療や尊厳死に関する意思を書面化したものを指します。
リビングウィルは、医療・介護現場での意思表示として使用されます。本人の意思を明確に示すことで、望まない延命措置を避けたり、尊厳ある最期を迎えたりすることを目的としています。
リビングウィルには、延命処置の希望だけでなく、葬儀や臓器提供に関する意思を含めることもできます。本人の意思を尊重した医療やケアを実現するための重要な文書といえるでしょう。
リビングウィルの法的位置づけ
日本においてリビングウィルには法的な拘束力はありません。あくまでも本人の意思を示す参考資料として扱われます。
ただし、家族の同意を得ていたり、医療者との十分な話し合いを経ていたりする場合は、リビングウィルの内容が尊重される可能性が高くなります。
法的拘束力はないものの、本人の意思を伝える重要な役割を果たすのがリビングウィルです。医療現場での意思決定プロセスにおいて、一定の影響力を持つ文書だといえるでしょう。
リビングウィルに含める内容と書式
リビングウィルに必ず含めるべき項目としては、以下のようなものがあります。
- 作成日
- 本人の署名
- 証人の署名
- 延命措置の希望
- 緩和ケアの希望
さらに、食事ができなくなったときの対応や、最期の過ごし方など、本人が希望する事項を追加することもできます。
書式としては、自由に記述する形式や、病院で用意された書式を使用する方法があります。家族や医療者にわかりやすく、本人の意思が明確に伝わる書き方が大切です。
リビングウィルと関連概念の比較(尊厳死、安楽死、ACP)
リビングウィルと関連する概念として、尊厳死、安楽死、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)などがあります。それぞれの概念を比較してみましょう。
概念 | 定義 | 日本での法的位置づけ |
---|---|---|
尊厳死 | 人間としての尊厳を保ったまま死を迎えること。回復の見込みがない場合に延命処置を行わない。 | 法的には認められていない |
安楽死 | 精神的・肉体的苦痛を取り除いて死を迎えること。積極的安楽死は薬物投与などで死を促す。消極的安楽死は延命措置を行わない。 | 法的に認められておらず、特に積極的安楽死は殺人罪となる可能性 |
ACP | 将来望む医療ケアを具体化するための話し合い。家族、医師、ケアマネジャーを交えて行う。 | – |
リビングウィルは、ACPを通じて具体化された本人の希望を文書化したものだといえます。リビングウィル、尊厳死、安楽死は、いずれも本人の意思を尊重した医療の実現を目指す概念ですが、それぞれ異なる位置づけがあることを理解しておく必要があります。
リビングウィル作成の意義とメリット
リビングウィルの作成には大きな意義があります。ここでは、リビングウィルを作ることで得られるメリットについて見ていきましょう。
本人の意思を尊重したケアの実現
リビングウィルを作成することで、本人の意思を明確に示すことができます。延命措置に関する希望や、最期の過ごし方など、自分らしい最期を迎えるための意思表示が可能となります。
医療・介護の現場では、リビングウィルを参考にすることで、本人の意思を尊重したケアを提供しやすくなります。本人の望まない延命措置を避けたり、望む緩和ケアを行ったりと、その人らしい最期の実現につながるのです。
また、意思表示ができなくなった場合でも、リビングウィルがあれば本人の意思を推し量ることができます。家族や医療者も、本人の希望に沿った判断を下しやすくなるでしょう。
家族の精神的負担の軽減
本人の意思が明確になっていない状況では、延命措置の是非など、重大な決定を家族が迫られるケースがあります。これは家族にとって大きな精神的負担となる可能性があります。
リビングウィルを作成しておけば、本人の意思が明確になるため、家族の精神的負担を軽減可能です。自分ならこうしてほしいという本人の希望を知ることで、家族も納得して決定を下せるようになるでしょう。
また、家族間で意見が分かれるようなケースでも、リビングウィルを参考にすることで話し合いがスムーズに進む可能性があります。本人の意思を尊重しながら、家族全体で合意形成をはかることができるのです。
医療従事者との円滑なコミュニケーション
リビングウィルは、医療従事者とのコミュニケーションを円滑にする役割も果たします。本人の意思が明文化されていれば、医師や看護師も治療方針を立てやすくなります。
「この場合はどうするのが本人の希望に沿うか」と迷ったときも、リビングウィルを確認することで判断の助けになるでしょう。患者本人、家族、医療者の間で認識を共有することにつながります。
さらに、事前にリビングウィルについて話し合っておけば、急な容態の変化にも慌てずに対応できます。本人の意思を踏まえながら、医療者と家族が連携してケアにあたれるようになるのです。
リビングウィルを作成しない場合のデメリット
では、リビングウィルを作成しないことで、どのようなデメリットが生じるのでしょうか。
まず、本人の意思が不明確なために、望まない延命治療が長期化するリスクがあります。回復の見込みがないケースでも、家族の同意が得られれば延命措置が継続される可能性があるのです。
また、家族が治療方針の決定を丸投げされ、重大な判断を迫られるケースも考えられます。本人の本当の希望がわからないまま、家族だけで決めなければならない状況は大きな負担となるでしょう。
本人の意思が明確でない場合、家族も医療者も判断に迷うことになります。「もしかしたら本人はこうしてほしいのでは」と不安を抱えながらケアにあたることになりかねません。
リビングウィルの作成方法
リビングウィルの作成は一見難しそうに思えるかもしれません。ここからは、リビングウィルの具体的な作り方を見ていきましょう。
リビングウィル作成の手順
リビングウィルを作成するには、まず自分の意思をしっかりと整理することが大切です。延命措置や緩和ケアに関する希望、最期の過ごし方など、考えておくべき事項をリストアップしましょう。
その上で、実際にリビングウィルを書面化します。自由記述形式で作成する方法と、病院やウェブサイトで用意されている書式を使う方法があります。必要事項を漏れなく記載し、わかりやすい表現で自分の意思を伝えることが重要です。
作成したリビングウィルには、日付と本人の署名を記入します。さらに、家族や友人など、信頼できる第三者に内容を確認してもらい、証人として署名をしてもらいましょう。
有効なリビングウィルにするためのポイント
リビングウィルを実際の医療現場で活用してもらうためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
まず、家族の同意を得ておくことが何より重要です。リビングウィルの内容について、家族との十分な話し合いを重ねましょう。家族の理解と合意があってこそ、本人の意思が尊重される可能性が高まります。
また、自分の意思を代弁し、医療判断を委ねられる代理人を指定しておくことも有効です。家族以外の第三者を代理人とすることで、より客観的な判断が可能になります。代理人にはリビングウィルの内容をよく理解してもらい、署名捺印をしてもらいましょう。
家族や医療従事者との事前の話し合いの重要性
リビングウィル作成と並行して、家族や医療従事者との事前の話し合いを重ねることが大切です。
家族には、リビングウィルに書き込む内容について相談し、理解を得ておく必要があります。本人の意思だけでなく、家族の心構えや役割分担なども話し合っておくと良いでしょう。
また、日頃からかかりつけ医などの医療者とコミュニケーションをとり、リビングウィルについて認識を共有しておくことも重要です。事前に話し合いを重ねることで、いざというときに本人の意思が尊重されやすくなります。
専門家の支援を受ける方法(司法書士、行政書士など)
リビングウィルの作成や、家族との話し合いについて専門家の支援を受けるのも良い方法です。
司法書士や行政書士などの専門家に相談することで、法的に有効なリビングウィルを作成することができます。書式の選び方や記載事項のアドバイス、家族への説明の仕方など、実践的なサポートが受けられます。
また、エンディングノートの書き方講座など、終活に関するセミナーに参加するのもおすすめです。専門家によるアドバイスを受けられるだけでなく、同じ悩みを抱える人との情報交換もできるでしょう。
リビングウィル作成や事前の話し合いは、人生の最終段階に向けた重要なプロセスです。専門家の知見を参考にしながら、十分な準備を進めていきたいものです。
リビングウィルの運用と注意点
リビングウィルは作成するだけでなく、その後の運用についても考えておく必要があります。ここでは、リビングウィルを適切に活用していくためのポイントを見ていきましょう。
リビングウィルの保管方法と共有
作成したリビングウィルは、いざというときにすぐに取り出せる場所に保管することが大切です。自宅の安全な場所に保管し、家族全員がどこにあるかを把握しておきましょう。
また、かかりつけ医や介護施設など、医療・介護に関わる関係者にもリビングウィルの存在を伝えておくと良いでしょう。コピーを渡しておくことで、緊急時に本人の意思を速やかに確認できます。
定期的な見直しと更新の必要性
一度作成したリビングウィルも、定期的に見直して更新していくことが大切です。病状の変化や新たな治療法の登場、家族状況の変化などに応じて、内容を改訂する必要があるからです。
少なくとも年に1回は見直しの機会を設け、必要に応じて内容を更新するようにしましょう。また、書面だけでなく、家族とのコミュニケーションも大切にしてください。ACPを繰り返し行いながら、リビングウィルを磨き上げていくことが理想的です。
リビングウィルの限界と問題点
リビングウィルは本人の意思を尊重する上で重要な役割を果たしますが、限界や問題点についても理解しておく必要があります。
まず、リビングウィルは法的拘束力を持たないため、絶対的なものではありません。あくまで本人の意思を示す参考資料と捉えるべきでしょう。実際の医療現場では、リビングウィルの内容を踏まえつつも、医学的な判断が優先される場合があります。
また、予期せぬ事態が起こった際に、リビングウィルの内容が状況に合わなくなるケースも考えられます。あらゆる状況を想定してリビングウィルを作成することは難しいのです。
さらに、家族間の意見の食い違いや、本人の意思変更などにより、リビングウィルの運用が困難になる可能性もあります。リビングウィルを絶対視するのではなく、臨機応変に対応していく姿勢が求められるでしょう。
他の終活との連携(遺言書、エンディングノートなど)
リビングウィルは、人生の最終段階に向けたさまざまな準備と連動させることで、より実効性の高いものになります。
たとえば、遺言書との連携が考えられます。財産の分配方法などを遺言書に記す一方で、延命措置への対応はリビングウィルに記すといった使い分けです。両者を組み合わせることで、財産面と医療面の両方から、本人の意思を尊重した人生の締めくくりが可能になります。
また、エンディングノートを活用するのも有効な方法です。エンディングノートとは、自分の人生を振り返り、死に対する思いや伝えたいメッセージなどを記す冊子のことです。
リビングウィルとエンディングノートを合わせて作成することで、自分らしい最期を迎えるための道筋がより明確になるでしょう。家族に対するメッセージを添えることで、スムーズな看取りにもつなげられます。
人生の集大成ともいえる終活。さまざまな選択肢を組み合わせながら、十分な時間をかけて、納得のいく準備を進めていきたいものです。
リビングウィル普及に向けた取り組み
リビングウィルを広く社会に普及させていくために、様々な取り組みが必要とされています。ここでは、リビングウィルをより身近なものとするための方策について考えていきましょう。
日本におけるリビングウィルの現状
日本では、リビングウィルの概念は徐々に浸透しつつあるものの、まだ十分に普及しているとはいえません。法的な拘束力がないことや、家族や医療者との認識の共有が不十分であることが、リビングウィル普及の障壁となっています。
しかし近年は、高齢化の進展に伴い、自分らしい最期を迎えたいという意識が高まりつつあります。「終活」の一環としてリビングウィルに注目が集まり、書式の整備や啓発活動が各地で進められています。
また、厚生労働省がACPを推奨するなど、政策面からもリビングウィル普及に向けた後押しがなされつつあります。本人の意思を尊重した医療の実現に向けて、リビングウィルの重要性への理解は着実に広がっているのです。
諸外国のリビングウィル事情
欧米諸国では、リビングウィルが法制化され、広く浸透しています。たとえばアメリカでは、1990年に41州で「リビングウィル法」が制定され、リビングウィルの法的な位置づけが明確化されました。
法整備が進んでいます。本人の意思を尊重することを医療者の義務とし、リビングウィルに従った医療を提供することが求められているのです。
こうした国々では、リビングウィルの作成が普通の行為として定着しています。医療者も、患者のリビングウィルを確認することが当たり前の習慣となっているのです。日本でも、諸外国の取り組みを参考にしながら、リビングウィルの普及を図っていく必要があるでしょう。
今後のリビングウィル普及への課題
日本でリビングウィルをより広く普及させるためには、いくつかの課題を克服する必要があります。
まず、リビングウィルに対する正しい理解を広めることが不可欠です。リビングウィルの意義や役割について、わかりやすく伝える啓発活動が求められます。メディアやセミナーなどを通じて、継続的な情報発信を行うことが有効でしょう。
また、法的な整備も急務といえます。現状では法的拘束力がないため、リビングウィルが確実に尊重される保証がありません。リビングウィルの法的な位置づけを明確にし、医療現場で活用しやすい環境を整えることが求められます。
さらに、家族や医療者との連携を深めることも重要な課題です。リビングウィルの内容について、本人と家族、医療者が十分に話し合える場を設ける必要があります。関係者間の合意形成を丁寧に進めることで、リビングウィルの実効性を高めていくことができるでしょう。
リビングウィル啓発のための社会的取り組み
リビングウィルの普及に向けて、さまざまな社会的取り組みが求められます。行政、医療機関、福祉施設など、多様な立場からの働きかけが不可欠だといえるでしょう。
行政には、リビングウィルに関する広報活動や、書式の整備・提供などが期待されます。国や自治体が主導して、わかりやすいパンフレットの配布や説明会の開催などを進めることが有効です。リビングウィルの重要性を広く訴え、作成を促す施策が求められます。
医療機関や福祉施設にも、リビングウィルの啓発で重要な役割があります。患者や利用者に対し、リビングウィルの意義を説明し、作成をサポートする体制の構築が望まれます。また、かかりつけ医などが主導して、ACPを推進することも効果的でしょう。
さらに、市民団体などによる草の根の活動も重要です。終活に関心のある人たちが集まり、リビングウィルについて学び合う場をつくることが期待されます。当事者視点からの課題共有や、ピア・サポート(同じような立場・境遇の人によるサポート)の充実は、リビングウィル普及の原動力になるはずです。
リビングウィル普及のためには、社会全体で粘り強く取り組みを進めていくことが何より大切です。一人一人の意識を高め、本人の意思を尊重する文化を育んでいくことが、より良い人生の最終段階の実現につながるのです。
まとめ
リビングウィルとは、元気なうちに延命治療や最期の過ごし方などの意思を書面化したものです。本人の意思を尊重したケアの実現、家族の精神的負担の軽減、医療者との円滑なコミュニケーションなどのメリットがあります。一方で法的拘束力はなく、定期的な見直しや家族との十分な話し合いが必要です。作成にあたっては、書式の確認や専門家の支援を受けることをおすすめします。また、エンディングノートや遺言書など、他の終活との連携も大切でしょう。

監修 角田(株式会社葬儀のこすもす)
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