食事が取れず点滴だけの場合、寿命はどれぐらい?医療選択の心構え

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2025/04/01
食事が取れず点滴だけの場合、寿命はどれぐらい?医療選択の心構え

大切な家族が食事を取れなくなり、点滴による栄養補給が始まるとき、多くの方が「あとどれくらい一緒にいられるのだろう」と不安になります。終末期医療においては、栄養摂取の方法が患者の余命や生活の質に大きく影響します。本記事では、食事が取れず点滴だけとなった場合の寿命の目安と、患者と家族がより良い選択をするための医療情報を解説します。

点滴のみで栄養を摂る場合の余命はどれくらい?

大切な人が食事を取れなくなると、残された時間がどれくらいなのか気になるものです。点滴による栄養摂取のみとなった場合の余命には一定の傾向があります。

点滴の種類による余命の違い

調査結果によると、通常の末梢静脈栄養(腕などの静脈から点滴)のみで栄養を摂取している場合、平均的な余命は約60日とされています。一方、経管栄養(消化管にカテーテルを通し投与)では平均827日と、かなり差があることが分かっています。ただし、これはあくまで平均値であり、個人の状態によって大きく異なることを理解しておく必要があります。

点滴の方法や患者の状態によって、実際の余命は数日から数カ月、場合によっては1年以上と幅があります。特に、基礎疾患の種類や進行度が大きく影響します。

余命に影響する要因

点滴のみで栄養を摂る患者の余命は、いくつかの重要な要因によって左右されます。まず、原因となっている病気の種類と進行度が最も大きな影響を与えます。がんの末期と一時的な嚥下障害では、同じ点滴栄養でも予後が大きく異なります。

ご飯が食べられなくなる理由と終末期の体の変化

高齢者や病気の終末期に食べられなくなる現象は、自然な体の変化である場合が多いです。この変化を理解することは、適切なケア方針を決める上で重要です。

認知症や終末期に食事が取れなくなるメカニズム

終末期になると、身体はエネルギーを節約するために様々な機能を徐々に低下させていきます。嚥下(飲み込み)機能の低下はその一つで、これにより食べ物や水分の摂取が難しくなります。認知症の進行によって食事の認識や摂取方法が分からなくなることもあります。

重要なのは、食べられなくなることが死に近づいているサインであることが多く、体が自然に食欲を失っているという点です。この段階で無理に栄養を摂取させることは、時に体への負担となり、かえって苦痛を増す可能性があります。

終末期における消化機能の変化

死が近づくにつれて、消化器官を含む内臓の機能は徐々に低下していきます。胃腸の蠕動運動が弱まり、消化酵素の分泌も減少するため、食べ物を消化・吸収する能力が著しく低下します。

この状態で無理に栄養を与えると、消化できずに体内に滞留し、むくみや腹部膨満感、時には吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。終末期では、体は必要最小限のエネルギーしか求めておらず、過剰な栄養摂取は逆効果となる場合が多いのです。

食事が取れない場合の栄養摂取方法の種類と特徴

口から食事が取れなくなった場合、いくつかの代替栄養摂取方法があります。それぞれに特徴とメリット・デメリットがありますので、状況に応じた選択が必要です。

末梢点滴(末梢静脈栄養)

末梢点滴は、手や腕の表面近くにある静脈に針を刺して栄養や水分を補給する方法です。主に短期間の栄養補給や水分・電解質の調整に用いられます。一日当たり最大で約1,000kcalまでの栄養を供給できますが、これは必要栄養量の半分以下となります。

この方法は比較的低侵襲で実施が容易ですが、長期間の栄養管理には不十分です。また、静脈炎のリスクがあるため、定期的な刺入部位の変更が必要となります。末梢点滴は主に一時的な対応として、または緩和ケアの一環として用いられることが多いです。

中心静脈栄養(TPN)

中心静脈栄養は、心臓近くの太い静脈にカテーテルを挿入し、高濃度の栄養液を投与する方法です。一日当たり最大2,500kcalまでの栄養摂取が可能で、長期的な栄養管理に適しています。

この方法はより多くの栄養素を効率的に供給できる反面、カテーテル挿入時の合併症リスクや感染症のリスクが高まります。また、定期的なカテーテル管理が必要で、専門的な医療ケアが不可欠です。中心静脈栄養は消化管が使用できない場合や、長期間の栄養サポートが必要な場合に選択されます。

経鼻経管栄養

経鼻経管栄養は、鼻から食道を通して胃までチューブを挿入し、そこから液体状の栄養剤を送り込む方法です。摂取可能なカロリー量には制限がなく、消化管が機能している限り効率的な栄養補給が可能です。

この方法は通常4週間程度の使用を想定しており、それ以上になると不快感や合併症のリスクが高まります。チューブによる不快感や誤嚥性肺炎のリスクなどが考えられます。また、自己抜去のリスクがあるため、認知機能に問題がある患者では注意が必要です。

胃ろう(PEG)

胃ろうは、腹壁を通して直接胃にチューブを留置する方法です。主に長期的な経管栄養が必要な場合に選択されます。鼻からのチューブがないため、顔の不快感が少なく、自己抜去のリスクも低減します。

ただし、胃ろう造設には手術が必要であり、造設部位の感染や腹膜炎などの合併症リスクがあります。また、胃ろうを造設しても誤嚥性肺炎のリスクが完全になくなるわけではありません。定期的なチューブ交換と造設部位のケアが必要となります。

腸ろう(PEJ)

腸ろうは、直接小腸(主に空腸)にチューブを留置する方法です。胃の機能に問題がある場合や、誤嚥リスクが特に高い患者に適しています。

点滴による栄養摂取が有効なケースと効果が薄いケース

点滴による栄養摂取は万能ではありません。状況によって効果的な場合と、あまり効果が期待できない場合があります。適切な医療選択のために、この違いを理解しておくことが重要です。

点滴栄養が効果的なケース

点滴栄養が特に有効なのは、一時的な栄養不足に対応する場合です。例えば、手術後の回復期間や、一時的な嚥下障害、急性疾患からの回復期などでは、点滴栄養が体力回復を助け、早期の経口摂取再開につながります。

また、治療によって回復が見込める疾患の場合も、その治療期間中の栄養サポートとして点滴は効果的です。特に、回復のために必要な栄養を確保する目的では、積極的な点滴栄養が患者の予後を改善することがあります。若年層や基礎体力のある患者では、点滴栄養の効果がより顕著に現れることが多いです。

点滴栄養の効果が限定的なケース

一方で、終末期の患者や回復の見込みが低い重度疾患の場合、点滴栄養の効果は限定的であることが多いです。特に死期が近い患者では、体の代謝機能自体が低下しているため、投与された栄養素を効果的に利用できません。

また、認知症の末期や非常に高齢の患者では、点滴栄養による積極的な介入が必ずしも生活の質を高めるとは限りません。むしろ、過剰な輸液が浮腫や呼吸困難を引き起こすことがあります。このような場合、点滴栄養は緩和ケア(快適さを重視したケア)の一環として、最小限の水分と栄養素を提供する方向に調整されるべきでしょう。

点滴での栄養摂取のメリットとデメリット

点滴による栄養摂取には、状況に応じたメリットとデメリットがあります。家族が医療選択を行う際には、これらを十分に理解して判断することが大切です。

点滴栄養のメリット

点滴栄養の最大のメリットは、口から食べられない状態でも必要な水分や栄養素を体内に届けられることです。特に末梢点滴は設置が比較的容易で、患者への身体的負担が少ないという利点があります。

また、経口摂取が困難な高齢者にとって、点滴栄養は誤嚥性肺炎のリスクを軽減できます。食べ物や水分が気管に入ることで起こる肺炎は、高齢者の主要な死因の一つであり、点滴による栄養摂取はこのリスクを回避できるという大きなメリットがあります。

さらに、一時的な栄養不足状態を乗り越えるための「橋渡し」として点滴栄養は有効です。回復可能な状態であれば、この間に体力を維持し、早期回復につなげることができます。

点滴栄養のデメリット

点滴栄養の主なデメリットは、口から摂取する場合と比べて栄養効率が悪く、提供できる栄養量に限界があることです。特に末梢点滴では一日の摂取カロリーが約1,000kcalに制限されるため、長期間では栄養不足に陥る可能性があります。

また、点滴部位の感染リスクや、カテーテル関連の合併症リスクも無視できません。長期間の点滴は静脈炎や血栓症のリスクを高め、中心静脈栄養ではカテーテル関連血流感染症などの深刻な合併症の可能性もあります。

終末期においては、点滴栄養が自然な死のプロセスを延長させ、患者の苦痛を長引かせることもあります。体が受け入れられる以上の水分や栄養を投与すると、むくみや呼吸困難といった症状を悪化させることがあるのです。

家族に点滴による栄養摂取を受けさせる際の注意点

大切な家族が食事を取れなくなったとき、多くの方が「少しでも長く生きてほしい」という思いから点滴栄養を望みます。しかし、特に終末期においては、慎重な判断が必要です。

終末期での点滴栄養の考え方

医学的観点からは、終末期の患者に対する積極的な点滴栄養は必ずしも推奨されていません。これは単に延命を図るだけでなく、患者の快適さと尊厳を考慮した判断が必要だからです。

終末期における食欲低下や水分摂取量の減少は、体が自然に死に向かうプロセスの一部であることが多く、無理に栄養や水分を補給することで患者の負担が増すことがあります。このような状態では、少量の水分補給と症状緩和に焦点を当てたケアが適切とされています。

家族は「何もしないことへの罪悪感」に苦しむことがありますが、時には積極的な医療介入を控えることが、患者にとって最も思いやりのある選択となることを理解することが大切です。

点滴による負担と抜去リスク

点滴を受けている患者、特に認知機能に問題がある患者は、点滴の不快感から自ら抜去しようとすることがあります。これにより、点滴を維持するために身体拘束が必要になることもあり、患者の尊厳や快適さを損なう可能性があります。

また、点滴部位の痛みや腫れ、針の刺し替えによる苦痛も無視できません。特に血管が細く脆くなっている高齢者では、点滴の維持自体が大きなストレスとなることがあります。

家族は、点滴による栄養摂取が患者にもたらす可能性のある不快感や苦痛についても考慮し、本当に患者のためになる選択かを医療チームと十分に話し合うことが重要です。

点滴が苦しみを長引かせる可能性

終末期において過剰な輸液は、しばしば患者の苦痛を増大させることがあります。体が処理できない以上の水分が投与されると、全身のむくみ(浮腫)が生じ、特に肺に水分がたまる肺水腫は呼吸困難を引き起こします。

また、消化器系の機能が低下している終末期では、栄養輸液によって胃腸の負担が増し、腹部膨満感や吐き気、嘔吐などの不快な症状が現れることもあります。これらの症状は、患者の生活の質を著しく低下させる可能性があります。

家族は医療チームと密に連携し、点滴の量や内容を患者の状態に合わせて適宜調整することが大切です。時には点滴を減量または中止することが、患者の苦痛軽減につながる最善の選択となることもあります。

元気なうちに家族と終末期医療について話し合うことの重要性

終末期医療の決断は、非常に感情的で難しいものです。しかし、事前に家族間で話し合っておくことで、その負担を大きく軽減することができます。

事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)の準備

事前指示書は、自分が意思決定できなくなった場合に備えて、希望する医療やケアについて前もって文書化しておくものです。特に点滴や人工栄養についての希望も含めることができます。

日本では法的拘束力はないものの、医療チームや家族にとって重要な指針となります。元気なうちに自分の希望を明確に伝えておくことで、家族の精神的負担を軽減し、後悔のない選択をサポートすることができます。

事前指示書の作成にあたっては、かかりつけ医に相談したり、専門的なガイダンスを受けることをお勧めします。自分の価値観や望む生活の質について十分に考慮した上で作成することが大切です。

家族間での終末期ケアの希望の共有

事前指示書の有無にかかわらず、家族間で終末期のケアについて話し合っておくことは非常に重要です。「食べられなくなったらどうするか」「点滴や胃ろうを希望するか」といった具体的な話題を、健康なうちに家族で共有しておきましょう。

このような会話は決して容易ではありませんが、家族全員が本人の意向を理解しておくことで、いざというときの判断がスムーズになります。また、後から「本当にこれでよかったのだろうか」という後悔や罪悪感を減らすことにもつながります。

話し合いの機会として、家族の誕生日や年末年始など、家族が集まる機会を活用するとよいでしょう。重い話題ですが、「もしものときのために」という前置きで自然に話題に出すことができます。

医療チームとの連携:最善の選択をするために

終末期医療における決断は、医療専門家のサポートを受けながら行うことが重要です。患者と家族のニーズに合った適切な選択をするためには、医療チームとの効果的なコミュニケーションが不可欠です。

主治医・看護師との情報共有

患者の状態や予後について、定期的に医療チームと情報を共有することが大切です。疑問や不安があれば、遠慮なく質問しましょう。「点滴の効果はどの程度期待できるのか」「他の選択肢はあるのか」など、具体的な質問をすることで、より明確な情報を得ることができます。

また、患者の状態の変化や新たな症状については、速やかに医療チームに報告することが重要です。些細な変化でも、治療方針の見直しが必要になる場合があります。良好なコミュニケーションを維持することで、患者にとって最適なケアを提供することができます。

緩和ケアチームの活用

終末期においては、緩和ケアの専門家の支援を受けることも検討すべきです。緩和ケアチームは、痛みや不快感の管理に専門知識を持ち、患者の生活の質を最大限に高めるサポートを提供します。

多くの病院には緩和ケアチームがあり、主治医を通じて相談することができます。在宅療養の場合でも、訪問看護や在宅緩和ケアサービスを利用できることがあります。早い段階から緩和ケアを取り入れることで、患者の苦痛を軽減し、残された時間をより快適に過ごすことができます。

セカンドオピニオンの検討

重要な医療決定を行う前に、別の医師の意見(セカンドオピニオン)を求めることも検討すべきです。特に、栄養摂取方法の選択や終末期ケアの方針について迷いがある場合は、異なる視点からの専門的意見が役立つことがあります。

セカンドオピニオンを求めることは、現在の医療チームに対する不信感の表れではなく、より良い決断をするための自然なプロセスです。多角的な視点から情報を集めることで、患者と家族にとって本当に適切な選択をすることができます。

まとめ

食事が取れなくなり点滴による栄養摂取を余儀なくされたとき、患者とご家族は難しい選択に直面します。本記事では、点滴栄養と余命の関係、様々な栄養摂取方法、そして終末期における医療選択について解説しました。

  • 点滴のみで栄養を摂る場合の平均的な余命は末梢点滴で約60日、経管栄養で約827日
  • 終末期に食べられなくなるのは自然な身体の変化であり、無理な栄養補給が必ずしも最善ではない
  • 栄養摂取方法には末梢点滴、中心静脈栄養、経鼻経管栄養、胃ろう、腸ろうなど複数の選択肢がある
  • 終末期では点滴による過剰な水分・栄養補給が苦痛を増す可能性もある
  • 事前に家族間で終末期医療について話し合い、医療チームと連携することが重要

大切な人の最期をどう支えるかは非常に個人的な選択です。医療的な情報を理解した上で、患者の意思を尊重し、生活の質を最優先した判断をしましょう。不安なことがあれば、遠慮なく医療専門家に相談することをお勧めします。



監修 角田(株式会社葬儀のこすもす)

家族葬のセレモニーハウスは、神奈川県、東京都、北海道(札幌市)で、心のこもった家族葬をご納得いただける価格でご提供している家族葬専門の葬儀社です。
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