末期の水(死に水)とは?意味や手順・作法について解説

2024/06/12
末期の水(死に水)とは?意味や手順・作法について解説

大切な人を亡くされた悲しみの中で、私たちにできる最初のお別れの儀式が「末期の水(死に水)」です。医師の臨終宣告後、できるだけ早い段階で、故人の口元に水を含ませ、清め、旅立ちを見送ります。病院では医療スタッフの誘導のもと、自宅では葬儀社や訪問看護師の協力を得ながら、身近な人から順に、故人への感謝の想いを胸に、心を込めて水を含ませていきます。故人にとっても、遺族にとっても、大切な区切りとなるこの儀式。古くから日本人の間で大切に受け継がれてきた、尊い風習なのです。

末期の水(死に水)とは何か

末期の水(死に水)とは、大切な人が亡くなった際に、その人の口元に水を含ませる儀式のことを指します。故人に対して行われる最初の儀式であり、古くから日本の葬送習俗として親しまれてきました。

末期の水(死に水)の意味と概要

末期の水は、臨終の間際に行われる儀式で、次のような意味合いがあります。

  1. 亡くなった方の口の中を清め、乾燥を防ぐ。
  2. 死後の旅立ちに備え、喉の渇きを癒す。
  3. 最期のお別れとして、故人に寄り添う。

通常、医師から臨終が告げられた後、できるだけ早い段階で行うのが一般的です。病院では医療スタッフの指導のもと、自宅では葬儀社や訪問看護師の助言を得ながら、家族や近親者が中心となって執り行います。

末期の水(死に水)の由来と歴史

末期の水の起源については諸説ありますが、主な由来として以下のようなものが挙げられます。

由来説明
仏教の影響お釈迦様の入滅の際、弟子たちが口元に水を含ませたという経典の故事に由来するとされる。
故人への願い水の力で故人が生き返ることを願う気持ちの表れとする説もある。
神道の儀式死によって生じた穢れを清める目的で行われていたという説もある。

諸説ありますが、いずれにしても末期の水は長い歴史の中で日本人の死生観や習俗と深く結びつき、現在に至るまで大切に受け継がれてきた儀式と言えるでしょう。

浄土真宗では末期の水(死に水)を行わない理由

一般的に末期の水は日本の葬儀の習わしとして広く認識されていますが、浄土真宗では末期の水を行いません。その理由として、以下のような教義上の解釈があります。

  • 死亡後にすぐ成仏するため、「死生の旅路」がない。
  • 死後は直接極楽浄土に行き、そこでは飲食に困らない。

浄土真宗では独自の葬送儀礼が行われますが、故人を偲び、礼拝の心を捧げるという点では他の宗派と変わりありません。末期の水は宗教や文化によって捉え方が異なりますが、故人を敬い、見送る心は普遍的なものと言えるでしょう。

末期の水(死に水)を行うタイミングと場所

医師から臨終宣告を受けた後に行うのが一般的

末期の水は、医師から患者の臨終が告げられた後の段階で行うのが一般的です。臨終の前兆が見られた場合でも、必ず医師の死亡診断を待ってから行います。家族や親しい人が揃うのを待つ必要はなく、立ち会える人で行うことが大切です。

ただし、患者の容態や家族の心情によっては、臨終から少し時間をおいて行うこともあります。柔軟に対応しましょう。

病院では医療スタッフの誘導で行う

末期の水は、病院で行うことも少なくありません。その場合は、医療スタッフの指導や助言を仰ぎながら進めていきます。

まず、担当医から臨終の宣告を受けたら、看護師に末期の水を行いたい旨を伝えましょう。病院によっては、お清めセットを用意してくれる場合もあります。

病室でのお清めが困難な場合は、安置室や霊安室など、別の場所に移動して行うこともあります。医療スタッフの誘導に従って、適切な場所で行いましょう。

自宅で行う場合の準備と葬儀社・訪問看護師の協力

自宅で看取りを行った場合は、事前に準備しておいたお清めセットを使って、家族が中心となって末期の水を行います。

ただし、初めての経験では何をどうすればよいか分からないことも多いでしょう。そのような時は、葬儀社や訪問看護師に相談し、協力を仰ぐことをおすすめします。

葬儀社の人は、お清めの手順や作法について詳しく、適切な助言をしてくれます。また、訪問看護師は医療面でのサポートだけでなく、エンゼルケアや死後の処置についても経験豊富です。分からないことがあれば、遠慮なく相談しましょう。

自宅で行う場合は、できるだけ多くの近親者で末期の水を行うのが望ましいとされています。故人とのお別れの時間を共有し、お互いが支え合うことで、喪失の悲しみを乗り越えていく助けとなるでしょう。

末期の水(死に水)の具体的な手順

末期の水は、故人に対して行う最初の儀式であり、心を込めて丁寧に行うことが大切です。ここでは、末期の水の具体的な手順について解説します。

末期の水(死に水)に必要な道具と準備

末期の水を行うには、以下のような道具を準備します。

  • 清浄な水(冷水または常温水)
  • お清めセット(箸、脱脂綿、お椀)
  • タオル(故人の顔を拭くため)

お清めセットは、葬儀社から提供される場合もありますが、自宅で行う場合は事前に用意しておくとよいでしょう。水は、ミネラルウォーターなど、清浄なものを使用します。

血縁関係の深い順番で行う

末期の水は、故人と血縁関係の深い順番で行うのが一般的です。以下のような順序が目安となります。

  1. 配偶者
  2. 子ども(年齢順)
  3. 兄弟姉妹
  4. その他の親族

ただし、これはあくまで目安であり、故人との関係性や家族の事情に応じて、柔軟に対応することが大切です。

故人の口元を濡らす方法と注意点

末期の水の手順は、以下のように進めていきます。

  1. お椀に水を注ぎ、箸の先に脱脂綿を巻いて縛る。
  2. 脱脂綿をお椀の水に浸し、よく湿らせる。
  3. 故人の口元に脱脂綿を軽く当て、上唇から下唇へ、左から右へ水を含ませる。
  4. 唇全体に水を含ませたら、綿を取り替えて、再度水を含ませる。
  5. 最後に、故人の顔をタオルできれいに拭く。

末期の水を行う際は、以下の点に注意しましょう。

  • 脱脂綿は、口の中に入れ込まないよう注意する。
  • 水を含ませ過ぎないよう、脱脂綿の水分量に気をつける。
  • 故人の顔に水滴が垂れないよう、丁寧に拭き取る。
  • 故人に話しかけながら、ゆっくりと心を込めて行う。

末期の水は、故人との最後のお別れの儀式です。悲しみに暮れる中でも、故人を敬う気持ちを忘れずに、丁寧に行うことが大切です。医療スタッフや葬儀社の担当者に相談しながら、故人にとって最良の形で末期の水を執り行いましょう。

心を込めて行う末期の水(死に水)の意義

故人を安らかに旅立たせるための儀式

末期の水は、故人が安らかに旅立てるように願いを込めて行われる儀式です。生前、私たちは水を飲むことで喉の渇きを癒していました。それと同じように、末期の水で故人の口元を濡らすことは、死後の旅路に備え、心象的に喉の渇きを癒すという意味合いがあります。

また、清浄な水で口元を清めることで、穢れを払うという意味もあります。古来より、日本では死を穢れとする考えがありました。末期の水は、そうした死に伴う穢れを清め、故人を清らかな状態で送り出すための儀式とも言えるでしょう。

遺族が区切りをつけるための大切な儀式

末期の水は、故人を送り出す家族にとっても、大変意義深い儀式です。愛する人との別れは、誰にとっても悲しく、受け入れがたいものです。しかし、末期の水を行うことで、「最期のお別れ」という区切りをつけることができます。

残された家族は、末期の水を通して故人を見送ることで、悲しみを乗り越え、新たな人生のスタートを切る勇気を得ることができるのです。それは、故人への感謝の気持ちを込めると同時に、遺された者が前を向いて生きていく決意表明でもあるのです。

心を込めて行うことで故人への想いを表現

末期の水は、単に形式的に行うだけでは意味がありません。大切なのは、故人に対する想いを込めて、丁寧に行うことです。

水を含ませる際には、故人の口元に優しく脱脂綿を当て、ゆっくりと水を含ませていきます。その間、心の中で故人に話しかけ、感謝の気持ちや思い出を伝えましょう。

「〇〇さん、今まで本当にありがとう。あなたと過ごした日々は、私の一生の宝物です。安らかに眠ってください。」そのように、言葉に出来ない想いを胸に、心を込めて末期の水を行うことが何より大切なのです。

末期の水は、形式的な儀式ではありますが、そこに込められた想いは、故人へのメッセージとなって届くはずです。最愛の人を亡くした悲しみは、計り知れないものがあります。けれども、その悲しみを乗り越える力もまた、遺された者の中にあるのです。心を込めて行う末期の水が、そのきっかけとなることを願ってやみません。

まとめ

末期の水(死に水)は、大切な人との最後のお別れの儀式です。故人が安らかに旅立ち、遺された家族が新たな一歩を踏み出すきっかけとなる、とても意義深いものです。医師の臨終宣告後、できるだけ早い段階で、血縁関係の深い人から順に、清らかな水で故人の口元を濡らしていきます。病院ではスタッフの指示に従い、自宅では葬儀社や訪問看護師の助言を得ながら、必要な道具を準備し、丁寧に行いましょう。故人への感謝の気持ちを胸に、心を込めて水を含ませることが何より大切です。悲しみに暮れる中でも、愛おしい人への想いを形に表すことで、生きる希望を見出していけるはずです。



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