真言宗の葬儀の特徴|流れや参列の注意点を解説
近しい人が亡くなり、葬儀の準備を進めていく中で、宗派によって葬儀の作法が異なることにお気づきになったのではないでしょうか。この記事では、真言宗の葬儀に焦点を当て、その特徴や流れ、参列者が知っておくべき作法などを詳しく解説します。真言宗の葬儀に参列される際の疑問や不安を解消し、故人を偲ぶ大切な儀式に臨む上での心構えを持っていただけるはずです。
真言宗の概要と特徴
真言宗の歴史と成り立ち
真言宗は、平安時代初期に空海(弘法大師)によって中国から伝えられた密教を基に開かれた仏教宗派です。空海は、804年に遣唐使として中国に渡り、長安の青龍寺で真言密教を学びました。帰国後、高野山に金剛峯寺を開き、真言宗の根本道場としました。
真言宗は、大日如来を本尊とし、即身成仏を説く密教の教えを基調としています。密教とは、秘密の儀軌によって悟りを開く方法であり、真言宗ではこの教えを受け継いでいます。真言宗は、日本仏教の中でも特に重要な宗派の一つとして発展し、現在では全国に多くの寺院を有しています。
空海(弘法大師)の役割と影響
空海は、真言宗の開祖であり、日本密教の祖と呼ばれる人物です。彼は、中国で学んだ真言密教を日本に広め、仏教の発展に大きく寄与しました。空海は、高野山を開いて真言宗の根本道場とするとともに、東寺(教王護国寺)を京都に建立し、真言宗の中心寺院としました。
また、空海は優れた学者でもあり、書道、彫刻、建築など多方面で才能を発揮しました。彼の書いた法華経の写経は、国宝に指定されるなど高い芸術性を誇っています。空海の功績は、仏教のみならず日本文化全般に及んでおり、現代でも広く知られる歴史上の偉人の一人です。
密教からの影響と独自の儀式
真言宗は、密教の教えを基調としているため、他の仏教宗派とは異なる独特な儀式や作法があります。真言宗の修行では、身口意の三密行を重視します。三密行とは、身体の所作(身密)、真言の唱え方(口密)、心の在り方(意密)の三つを一致させる修行法です。
真言宗の代表的な儀式としては、灌頂(かんじょう)や土砂加持(どしゃかじ)があげられます。灌頂は、故人の頭に水を注ぎ仏の位に入れるようにする儀式です。土砂加持は、土砂を洗い清め、護摩をたいてご本尊の前で光明真言を唱える儀式で、故人にかけることで亡くなった人が成仏できるようにするものです。
このように、真言宗は密教の教えを受け継ぎ、独自の儀式や作法を発展させてきました。これらの儀式は、真言宗の教えを体現するものであり、宗派の特徴を示す重要な要素となっています。
真言宗の葬儀の流れと作法
通夜の流れと主な儀式
真言宗の葬儀では、まず故人を弔うための通夜が行われます。通夜では、僧侶による枕経が唱えられ、故人の冥福を祈ります。枕経とは、故人の枕元で読経することで、故人の魂を慰め、安らかに眠れるようにするための儀式です。
続いて、僧侶による通夜法話が行われます。通夜法話では、僧侶が故人の生前の思い出や、遺族へ向けた法話を述べ、故人を偲びます。通夜の最後には、通夜振舞いが行われ、参列者で故人を偲びながら、食事をとります。
真言宗の通夜では、他の宗派と比べて儀式の数は少なめですが、枕経や通夜法話といった大切な儀式が執り行われます。これらの儀式を通して、故人の冥福を祈り、遺族の悲しみを和らげることを目的としています。
納棺式と土砂加持の意味
通夜では、納棺式が行われます。納棺式では、遺体を棺に納める前に、土砂加持という真言宗独自の儀式が執り行われます。土砂加持とは、洗い清めた土砂を故人に振りかけることで、故人の罪障を消滅させ、成仏へと導く儀式です。
土砂加持が終わると、遺体は棺に納められます。このとき、遺体の手には数珠が握らせます。そして、家族や親族が最後の別れを告げ、棺に蓋がされます。納棺式は、故人を弔う上で重要な儀式の一つであり、真言宗ならではの作法が執り行われます。
葬儀当日の詳細な流れと各儀式の説明
納棺式の翌日には、いよいよ葬儀が執り行われます。真言宗の葬儀では、他の宗派とは異なる独特の儀式が数多く行われます。ここでは、葬儀の詳細な流れと、各儀式の意味について説明します。
- 塗香:遺体に香水を塗る儀式。清めの意味がある。
- 洒水:遺体に水を振りかける儀式。清めの意味がある。
- 三礼:僧侶が仏に礼拝する儀式。
- 剃髪:僧侶が頭髪や髭を剃る儀式。出家を意味する。
- 受戒:僧侶が仏門に入る際の誓いを立てる儀式。
- 表白:僧侶が儀式の目的を述べる儀式。
- 神分:神仏に供物を捧げる儀式。
- 引導:弔いの言葉を唱える儀式。
- 破地獄の印:地獄の苦しみから解放してもらう印を結ぶ儀式。
- 御引導大事:引導に関する重要な教えを述べる儀式。
- 血脈:師から弟子への教えの伝授を意味する儀式。
- 六大印:六大元素の印を結ぶ儀式。
- 諷誦文:経文を読み上げる儀式。
- 後讃:僧侶が読経した後に唱える言葉。
- 読経:経典を読み上げる儀式。
- 祈願:僧侶が祈りを捧げる儀式。
- 導師最極秘印:密教の深い教えに基づく印を結ぶ儀式。
- 退場:僧侶が本堂から退場する儀式。
- 出棺:棺を霊柩車に運び出す儀式。
以上が真言宗の葬儀で行われる主な儀式です。一つ一つの儀式に深い意味が込められており、故人の成仏と冥福を祈る大切な仏事となっています。儀式の順番や内容は、地域や寺院によって多少異なる場合もありますが、基本的な流れは同じです。
真言宗の葬儀は、密教の教えに基づいた独特の作法で執り行われます。遺族にとっては馴染みのない儀式も多いかもしれませんが、一つ一つの儀式に故人を弔う深い意味が込められています。大切な人を亡くした悲しみを、僧侶の読経や祈りに託し、心の安らぎを得ることができるのが、真言宗の葬儀の特徴だと言えるでしょう。
読経の意味と目的
真言宗の葬儀で中心的な儀式の一つが、読経です。読経とは、亡くなった人の冥福を祈って経典を読み上げることを指します。真言宗では、大日如来の教えが説かれた「大日経」や「金剛頂経」などの経典が読み上げられます。
読経には、亡くなった人の功徳を讃え、罪障を滅して成仏へと導く意味があると考えられています。真言宗では、この世は仮の世界であり、死後の世界こそが真実の世界であるという考え方があります。読経によって、亡くなった人が迷いの世界から抜け出し、真実の世界である浄土へ導かれると信じられているのです。
また、読経は遺族の心を慰める意味もあります。大切な人を亡くし、深い悲しみに暮れる遺族にとって、読経の言葉は心の支えとなります。僧侶の読経に耳を傾けることで、遺族は少しずつ悲しみを乗り越え、前を向いて歩んでいく力を得ることができるのです。
読経は、真言宗の葬儀だけでなく、四十九日法要などでも行われます。四十九日法要は、亡くなってから49日目に行われる法要で、この日に故人が浄土へ往生すると考えられています。読経を通して、改めて故人の冥福を祈り、遺族の思いを亡き人に伝える大切な機会となっています。
真言宗の葬儀における参列者の作法
焼香の正しい方法と回数
真言宗の葬儀で参列者が行う焼香は、他の宗派と異なる独特の作法があります。真言宗では、焼香は3回行うのが一般的です。
焼香の手順は、以下の通りです。
- 焼香台の前に立ち、軽く一礼する。
- 右手に抹香を持ち、左手を軽く添える。
- 抹香を額の高さまで持ち上げ、故人のご冥福を祈りながら火種にくべる。
- 焼香所作を合計3回繰り返し、合掌・礼拝する。
- 再び一礼して焼香台を離れる。
焼香は、故人への追悼の気持ちを示す大切な作法です。真言宗の作法に従って、心を込めて焼香を行いましょう。
真言宗で使用する数珠の種類と使い方
真言宗の葬儀で用いられる数珠は、振り分け数珠と呼ばれる108個の玉が連なった数珠です。これは、人間の煩悩の数が108個あると言われていることに由来しています。
振り分け数珠の使い方は、以下の通りです。
- 左右の中指にかけて、房を内側にして、手のひらで包み込む。
- 軽く3回すり合わせる。
- 数珠をすり合わせ音を立てることで、108の煩悩をすり砕くと言われている。
読経中は、参列者も数珠を手に持ち、心の中で故人を偲びながら真言を唱えます。数珠を通して、故人への思いを仏様に届けるのです。
服装のマナーと喪服の種類
真言宗の葬儀に参列する際の服装は、基本的に略式の喪服で問題ありません。男性は黒のスーツに白いネクタイ、女性は黒のワンピースやスーツが一般的です。アクセサリーは控えめにし、派手な装飾は避けましょう。
遺族の服装は、通夜や葬儀では本式の喪服を着用します。男性は黒紋付に袴、女性は黒留袖や喪服です。ただし、地域や家庭によって異なる場合もあります。四十九日法要以降は、徐々に略式の喪服や普段着へと移行していきます。
香典の表書きと相場
香典袋の表書きは、「御霊前」「御香典」と書くのが正式とされています。香典の相場は、友人や会社関係なら5,000円程度、親戚なら1万円から10万円程度が目安となります。
香典袋には、氏名と連絡先を記入します。ただし、一周忌など法事の際は、「御仏前」と表書きし、金額は友人や会社関係なら5,000円程度、親戚なら1万円から5万円が相場です。
関係性 | 香典の相場 |
---|---|
友人・会社関係 | 5,000円程度 |
親戚 | 1万円〜10万円程度 |
一周忌の法事 | 5,000円程度 |
真言宗の葬儀に参列する際は、宗派独自の作法やマナーを踏まえることが大切です。焼香の方法や数珠の使い方など、分からないことがあれば僧侶や会館スタッフに尋ねるようにしましょう。故人を偲び、遺族の悲しみに寄り添う気持ちを持って、葬儀に臨むことが何より大切なのです。
真言宗の葬儀に関する注意点
地域や寺院による作法の違い
真言宗の葬儀は、地域や寺院によって細かな作法に違いがあります。葬儀の流れや読経の内容、焼香の方法など、各寺院で独自の慣習が受け継がれている場合もあるでしょう。
そのため、葬儀の詳細については、担当する寺院や葬儀社に事前に確認することが大切です。特に、真言宗に馴染みのない方は、一般的な葬儀との違いに戸惑うこともあるかもしれません。分からないことがあれば、遠慮なく質問し、宗派独自の作法を教えてもらうようにしましょう。
事前に確認すべき事項
真言宗の葬儀を執り行う際は、以下のような点について事前に確認しておくと良いでしょう。
- 通夜や葬儀の日程や時間
- 通夜や葬儀で行われる主な儀式の内容
- 焼香の方法や読経中の作法
- 服装や持ち物、香典についてのマナー
- 四十九日法要などの仏事の日程と内容
これらの点を事前に把握しておくことで、葬儀当日は故人を偲び、遺族を支えることに集中できるはずです。また、宗派特有の作法を踏まえることは、故人への敬意を示すことにも繋がります。
葬儀後の四十九日法要と服装の移行
葬儀後、真言宗では四十九日法要が営まれます。これは、亡くなった日から数えて49日目に行う法要で、この日に故人が浄土へ往生すると考えられています。四十九日法要では、葬儀と同様に読経や焼香が行われ、改めて故人の冥福を祈ります。
四十九日法要を境に、服装は徐々に本式から略式の喪服へ、そして普段着へと移行していきます。ただし、地域や家庭によって異なる場合もあるので、遺族の意向を確認するのが良いでしょう。
真言宗の葬儀は、密教の教えに基づく独特の作法で執り行われます。大切な人を亡くした悲しみの中で、宗派特有の習わしを理解し、適切な服装やマナーを心がけることは容易ではないかもしれません。
しかし、故人を偲び、心を込めて葬儀に臨むことが何より大切なのです。真言宗の教えに触れながら、大切な人との別れの時間を過ごしていただければと思います。
まとめ
真言宗の葬儀は、密教の教えに基づいた独特の作法で営まれます。空海(弘法大師)によって平安時代に開かれたこの宗派では、土砂加持や読経など、故人を大日如来の浄土へ導くための儀式が大切にされています。参列者は、焼香を3回行い、数珠を手に故人を偲びます。香典は「御霊前」「御香典」と表書きし、服装は略式の喪服で構いません。真言宗ならではの慣習を踏まえつつ、故人への感謝の気持ちを込めて、葬儀に臨むことが何より大切なのです。
監修 角田(株式会社葬儀のこすもす)
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