葬儀の知識

喪主様やご遺族の方々が、葬儀に関して事前に知っておきたい知識、
参列者として知っておきたい作法などをご紹介いたします。

葬儀・葬式ご臨終・葬儀の準備 2024.06.12
末期の水(死に水)とは?意味や手順・作法について解説

末期の水(死に水)とは?意味や手順・作法について解説

大切な人を亡くされた悲しみの中で、私たちにできる最初のお別れの儀式が「末期の水(死に水)」です。医師の臨終宣告後、できるだけ早い段階で、故人の口元に水を含ませ、清め、旅立ちを見送ります。病院では医療スタッフの誘導のもと、自宅では葬儀社や訪問看護師の協力を得ながら、身近な人から順に、故人への感謝の想いを胸に、心を込めて水を含ませていきます。故人にとっても、遺族にとっても、大切な区切りとなるこの儀式。古くから日本人の間で大切に受け継がれてきた、尊い風習なのです。 末期の水(死に水)とは何か 末期の水(死に水)とは、大切な人が亡くなった際に、その人の口元に水を含ませる儀式のことを指します。故人に対して行われる最初の儀式であり、古くから日本の葬送習俗として親しまれてきました。 末期の水(死に水)の意味と概要 末期の水は、臨終の間際に行われる儀式で、次のような意味合いがあります。 亡くなった方の口の中を清め、乾燥を防ぐ。 死後の旅立ちに備え、喉の渇きを癒す。 最期のお別れとして、故人に寄り添う。 通常、医師から臨終が告げられた後、できるだけ早い段階で行うのが一般的です。病院では医療スタッフの指導のもと、自宅では葬儀社や訪問看護師の助言を得ながら、家族や近親者が中心となって執り行います。 末期の水(死に水)の由来と歴史 末期の水の起源については諸説ありますが、主な由来として以下のようなものが挙げられます。 由来説明仏教の影響お釈迦様の入滅の際、弟子たちが口元に水を含ませたという経典の故事に由来するとされる。故人への願い水の力で故人が生き返ることを願う気持ちの表れとする説もある。神道の儀式死によって生じた穢れを清める目的で行われていたという説もある。 諸説ありますが、いずれにしても末期の水は長い歴史の中で日本人の死生観や習俗と深く結びつき、現在に至るまで大切に受け継がれてきた儀式と言えるでしょう。 浄土真宗では末期の水(死に水)を行わない理由 一般的に末期の水は日本の葬儀の習わしとして広く認識されていますが、浄土真宗では末期の水を行いません。その理由として、以下のような教義上の解釈があります。 死亡後にすぐ成仏するため、「死生の旅路」がない。 死後は直接極楽浄土に行き、そこでは飲食に困らない。 浄土真宗では独自の葬送儀礼が行われますが、故人を偲び、礼拝の心を捧げるという点では他の宗派と変わりありません。末期の水は宗教や文化によって捉え方が異なりますが、故人を敬い、見送る心は普遍的なものと言えるでしょう。 末期の水(死に水)を行うタイミングと場所 医師から臨終宣告を受けた後に行うのが一般的 末期の水は、医師から患者の臨終が告げられた後の段階で行うのが一般的です。臨終の前兆が見られた場合でも、必ず医師の死亡診断を待ってから行います。家族や親しい人が揃うのを待つ必要はなく、立ち会える人で行うことが大切です。 ただし、患者の容態や家族の心情によっては、臨終から少し時間をおいて行うこともあります。柔軟に対応しましょう。 病院では医療スタッフの誘導で行う 末期の水は、病院で行うことも少なくありません。その場合は、医療スタッフの指導や助言を仰ぎながら進めていきます。 まず、担当医から臨終の宣告を受けたら、看護師に末期の水を行いたい旨を伝えましょう。病院によっては、お清めセットを用意してくれる場合もあります。 病室でのお清めが困難な場合は、安置室や霊安室など、別の場所に移動して行うこともあります。医療スタッフの誘導に従って、適切な場所で行いましょう。 自宅で行う場合の準備と葬儀社・訪問看護師の協力 自宅で看取りを行った場合は、事前に準備しておいたお清めセットを使って、家族が中心となって末期の水を行います。 ただし、初めての経験では何をどうすればよいか分からないことも多いでしょう。そのような時は、葬儀社や訪問看護師に相談し、協力を仰ぐことをおすすめします。 葬儀社の人は、お清めの手順や作法について詳しく、適切な助言をしてくれます。また、訪問看護師は医療面でのサポートだけでなく、エンゼルケアや死後の処置についても経験豊富です。分からないことがあれば、遠慮なく相談しましょう。 自宅で行う場合は、できるだけ多くの近親者で末期の水を行うのが望ましいとされています。故人とのお別れの時間を共有し、お互いが支え合うことで、喪失の悲しみを乗り越えていく助けとなるでしょう。 末期の水(死に水)の具体的な手順 末期の水は、故人に対して行う最初の儀式であり、心を込めて丁寧に行うことが大切です。ここでは、末期の水の具体的な手順について解説します。 末期の水(死に水)に必要な道具と準備 末期の水を行うには、以下のような道具を準備します。 清浄な水(冷水または常温水) お清めセット(箸、脱脂綿、お椀) タオル(故人の顔を拭くため) お清めセットは、葬儀社から提供される場合もありますが、自宅で行う場合は事前に用意しておくとよいでしょう。水は、ミネラルウォーターなど、清浄なものを使用します。 血縁関係の深い順番で行う 末期の水は、故人と血縁関係の深い順番で行うのが一般的です。以下のような順序が目安となります。 配偶者 子ども(年齢順) 親 兄弟姉妹 その他の親族 ただし、これはあくまで目安であり、故人との関係性や家族の事情に応じて、柔軟に対応することが大切です。 故人の口元を濡らす方法と注意点 末期の水の手順は、以下のように進めていきます。 お椀に水を注ぎ、箸の先に脱脂綿を巻いて縛る。 脱脂綿をお椀の水に浸し、よく湿らせる。 故人の口元に脱脂綿を軽く当て、上唇から下唇へ、左から右へ水を含ませる。 唇全体に水を含ませたら、綿を取り替えて、再度水を含ませる。 最後に、故人の顔をタオルできれいに拭く。 末期の水を行う際は、以下の点に注意しましょう。 脱脂綿は、口の中に入れ込まないよう注意する。 水を含ませ過ぎないよう、脱脂綿の水分量に気をつける。 故人の顔に水滴が垂れないよう、丁寧に拭き取る。 故人に話しかけながら、ゆっくりと心を込めて行う。 末期の水は、故人との最後のお別れの儀式です。悲しみに暮れる中でも、故人を敬う気持ちを忘れずに、丁寧に行うことが大切です。医療スタッフや葬儀社の担当者に相談しながら、故人にとって最良の形で末期の水を執り行いましょう。 心を込めて行う末期の水(死に水)の意義 故人を安らかに旅立たせるための儀式 末期の水は、故人が安らかに旅立てるように願いを込めて行われる儀式です。生前、私たちは水を飲むことで喉の渇きを癒していました。それと同じように、末期の水で故人の口元を濡らすことは、死後の旅路に備え、心象的に喉の渇きを癒すという意味合いがあります。 また、清浄な水で口元を清めることで、穢れを払うという意味もあります。古来より、日本では死を穢れとする考えがありました。末期の水は、そうした死に伴う穢れを清め、故人を清らかな状態で送り出すための儀式とも言えるでしょう。 遺族が区切りをつけるための大切な儀式 末期の水は、故人を送り出す家族にとっても、大変意義深い儀式です。愛する人との別れは、誰にとっても悲しく、受け入れがたいものです。しかし、末期の水を行うことで、「最期のお別れ」という区切りをつけることができます。 残された家族は、末期の水を通して故人を見送ることで、悲しみを乗り越え、新たな人生のスタートを切る勇気を得ることができるのです。それは、故人への感謝の気持ちを込めると同時に、遺された者が前を向いて生きていく決意表明でもあるのです。 心を込めて行うことで故人への想いを表現 末期の水は、単に形式的に行うだけでは意味がありません。大切なのは、故人に対する想いを込めて、丁寧に行うことです。 水を含ませる際には、故人の口元に優しく脱脂綿を当て、ゆっくりと水を含ませていきます。その間、心の中で故人に話しかけ、感謝の気持ちや思い出を伝えましょう。 「〇〇さん、今まで本当にありがとう。あなたと過ごした日々は、私の一生の宝物です。安らかに眠ってください。」そのように、言葉に出来ない想いを胸に、心を込めて末期の水を行うことが何より大切なのです。 末期の水は、形式的な儀式ではありますが、そこに込められた想いは、故人へのメッセージとなって届くはずです。最愛の人を亡くした悲しみは、計り知れないものがあります。けれども、その悲しみを乗り越える力もまた、遺された者の中にあるのです。心を込めて行う末期の水が、そのきっかけとなることを願ってやみません。 まとめ 末期の水(死に水)は、大切な人との最後のお別れの儀式です。故人が安らかに旅立ち、遺された家族が新たな一歩を踏み出すきっかけとなる、とても意義深いものです。医師の臨終宣告後、できるだけ早い段階で、血縁関係の深い人から順に、清らかな水で故人の口元を濡らしていきます。病院ではスタッフの指示に従い、自宅では葬儀社や訪問看護師の助言を得ながら、必要な道具を準備し、丁寧に行いましょう。故人への感謝の気持ちを胸に、心を込めて水を含ませることが何より大切です。悲しみに暮れる中でも、愛おしい人への想いを形に表すことで、生きる希望を見出していけるはずです。

葬儀・葬式ご臨終・葬儀の準備 2024.06.11
湯灌とは?費用や流れについて解説

湯灌とは?費用や流れについて解説

大切な人を亡くし、お葬式の準備に追われる中で、湯灌についてお悩みの方も多いのではないでしょうか。湯灌とは、故人の体を清め、あの世へ送り出すための儀式ですが、現代では必ず行う必要があるのか、費用はどれくらいかかるのか、などの疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。本記事では、湯灌の意味や由来、手順、必要な物品、費用などについて詳しく解説します。また、湯灌は必ず行う必要があるのか、自宅で行うことは可能なのかなど、よくある質問にもお答えします。故人を清浄な状態で送り出すための湯灌について、ご一緒に考えていきましょう。 湯灌とは何か 湯灌とは、亡くなった方の身体を清めるために行う儀式のことを指します。故人の身体をぬるま湯で丁寧に拭き、髪を洗い、身支度を整えることで、故人を清浄な状態にして、あの世へ送り出すための大切な儀式です。 湯灌の意味と由来 湯灌の「湯」は温かいお湯、「灌」は注ぐ、そそぐという意味があります。つまり、湯灌とは温かいお湯で故人の身体を清めるという意味になります。湯灌の起源は古く、仏教の影響を受けた儀式として平安時代から行われてきたとされています。 仏教では、人は死後、極楽浄土へ旅立つと考えられています。その旅立ちの前に、故人の魂を清めるために湯灌が行われてきました。また、故人の生前の疲れを取り、あの世でも清らかな姿で過ごせるようにするという意味合いもあります。 湯灌の目的と重要性 湯灌には、以下のような目的と重要性があります。 故人の身体を清め、あの世へ送り出すため 故人への感謝や哀悼の意を表すため 遺族の心の整理と区切りをつけるため 故人との最後の時間を過ごすため 湯灌を行うことで、故人を清浄な状態であの世へ送ることができます。また、湯灌を通して、遺族は故人への感謝の気持ちを表すことができます。湯灌は、遺族にとっても心の整理をつけ、故人とのお別れの時間を過ごす大切な儀式なのです。 現代における湯灌の位置づけ 現代では、医療の発達により、病院で亡くなる方が多くなりました。病院では、看護師による清拭が行われるため、改めて湯灌を行うかどうかは遺族の意向によります。 湯灌を行うかどうかは、遺族の心情や故人の意向、宗教観などを考慮して決められます。湯灌を行うことで、故人を丁寧に送ることができる一方で、遺族の中には湯灌は必要ないと考える方もいます。 重要なのは、遺族の意向です。無理に湯灌を行う必要はありません。遺族が納得して、故人を送り出せるようにすることが大切です。葬儀社に相談し、湯灌の必要性について話し合ってから、行うかどうかを決めると良いでしょう。 湯灌の流れと準備するもの 湯灌は、故人を清浄な状態であの世へ送り出すための大切な儀式です。ここでは、湯灌の具体的な流れと準備するものについて解説します。 湯灌を行う手順 湯灌の手順は、以下のようになります。 湯灌の準備をする(湯を沸かす、タオルや着替えを用意する等) 担当者による説明(口上) お湯かけ・シャワーによるお清め、顔や髪のお手入れ 着替えをさせる(死装束や故人の衣服等) 故人を安置する 湯灌は、故人に最後の「お風呂」を提供する儀式です。故人の体を丁寧に拭き、汚れを落とすことで、清らかな状態にします。 湯灌に必要な道具と材料 湯灌を行うためには、以下のような道具と材料を準備します。 カテゴリー必要なもの湯灌の道具湯桶、膳、ひしゃく、タオル、ガーゼ、綿棒など故人の着替え死装束や故人の衣服、肌着、ソックス、ガーゼ帽子など 事前に必要な道具と材料をチェックし、準備することが大切です。特に、故人の着替えは、故人の好みや宗教的な慣習に合わせて用意します。 湯灌を行う際の注意点 湯灌を行う際は、以下のような点に注意が必要です。 湯の温度はぬるま湯程度に調整する 湯灌の最中は、故人に話しかけながら行う 湯灌後は、故人の体の水分をしっかり拭き取る 湯灌は、故人への感謝と哀悼の意を込めて行う儀式です。焦らずゆっくりと、丁寧に行うことが大切です。また、湯灌の最中は、故人に優しく語りかけることで、最後のお別れの時間を過ごすようにしましょう。 なお、湯灌を行うかどうかは、遺族の意向によって異なります。湯灌は強制ではありませんので、遺族の心情に配慮しながら、湯灌の必要性について話し合うことが重要です。 湯灌にかかる費用について 湯灌は故人を清浄な状態で送り出すための大切な儀式ですが、その費用についても把握しておく必要があります。ここでは、湯灌にかかる一般的な費用の相場や内訳、費用を抑えるためのポイントについて解説します。 湯灌の一般的な価格相場 湯灌の費用は、葬儀社や地域によって異なりますが、一般的な価格相場は以下の通りです。 湯灌のみの場合:3万円〜5万円程度 湯灌と納棺を合わせた場合:5万円〜10万円程度 この価格には、湯灌に必要な物品や役務、スタッフの人件費などが含まれています。ただし、あくまで一般的な相場であり、実際の費用は葬儀社によって異なる点に注意が必要です。 湯灌費用の内訳と詳細 湯灌の費用は、以下のような項目で構成されています。 項目説明湯灌の物品費湯灌に必要な物品(タオル、ガーゼ、着替えなど)の費用湯灌の役務費湯灌の施行にかかる人件費や衛生管理費など湯灌車の費用湯灌を行うための特殊な車両(湯灌車)の利用料出張料自宅など葬儀場以外で湯灌を行う場合の出張料 これらの項目の中でも、特に物品費と役務費が湯灌費用の大部分を占めています。また、湯灌車の利用や出張料は、必要な場合に追加される費用です。 湯灌の費用は、故人の状態や、遺族の要望によって変動します。最小限の物品で簡略化した湯灌を行えば、費用を抑えることができるでしょう。 費用を抑えるためのポイント 湯灌の費用を少しでも抑えたい場合は、以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。 事前に葬儀社の価格や内容を比較する 湯灌の簡略化や、物品の選択を工夫する 遺族自身で湯灌の一部を行う 葬儀のパッケージプランを利用する 特に、葬儀社の価格や内容を事前に比較することは、費用を抑える上で非常に重要です。複数の葬儀社から見積もりを取り、サービス内容と価格のバランスを見極めましょう。 また、湯灌の簡略化や、遺族自身で湯灌の一部を行うことで、費用を抑えることもできます。ただし、故人への敬意を忘れず、遺族の心情に配慮しながら、適切な方法を選ぶことが大切です。 湯灌は、故人へのお別れの重要な儀式です。費用は大切な要素ですが、それ以上に故人を清浄に送ることが何より大切なのです。遺族の意向を汲みながら、適切な湯灌の方法を選びましょう。 まとめ 湯灌は故人を清浄な状態で送り出すための大切な儀式ですが、現代では必ず行う必要はありません。病院で清拭が行われるため、湯灌の必要性はご遺族の意向によって判断します。葬儀社が勧めてきても、無理に行う必要はなく、ご遺族が納得できる方法を選ぶことが重要です。湯灌のタイミングは死亡から24時間以内が理想的ですが、自宅で行う場合は衛生面の管理と故人の移動などの準備が必要になります。湯灌にかかる費用は3〜10万円程度が相場ですが、葬儀社や内容によって異なるため、事前に比較検討することをおすすめします。

葬儀・葬式ご臨終・葬儀の準備 2024.06.10
死化粧・エンゼルケアとは?手順と費用相場を解説

死化粧・エンゼルケアとは?手順と費用相場を解説

大切な人を亡くした際、ご遺族は故人をきれいな姿で見送りたいと願うものです。そこで重要となるのが、死化粧・エンゼルケアです。しかし、具体的にどのような手順で行われ、費用がいくらかかるのか、湯灌やエンバーミングとの違いは何かなど、分からないことも多いのではないでしょうか。本記事では、死化粧・エンゼルケアの意味や目的、手順、料金相場などを詳しく解説します。故人への敬意を込めた、適切な方法でのお見送りができるよう、ぜひ参考にしてください。 死化粧・エンゼルケアの意味と目的 死化粧・エンゼルケアの定義 死化粧・エンゼルケアとは、亡くなった方のご遺体に対して行う、清拭や整容、着替えなどの一連の処置のことを指します。ご遺体を丁寧に扱い、尊厳を持って最期のお別れができるように準備することが目的です。 故人とご遺族への配慮 死化粧・エンゼルケアは、故人に対する敬意と、ご遺族の心情に配慮して行われます。生前の姿に近づけるように、髪を整え、化粧を施すことで、安らかな表情で旅立ちを迎えられるようにします。また、ご遺族が最後の別れを惜しむ際に、きれいな姿で見送ることができるよう心がけます。 死化粧・エンゼルケアを行う理由 死化粧・エンゼルケアを行う主な理由は以下の3つです。 故人の尊厳を守るため ご遺族の心情に寄り添うため 感染症や体液漏出を防ぐため 特に、ご遺族にとって大切な方の最期の姿は、深く心に刻まれるものです。その思い出が、少しでも穏やかで美しいものとなるよう、専門スタッフが丁寧に死化粧・エンゼルケアを行います。 死化粧・エンゼルケアの具体的な手順 死化粧・エンゼルケアは、故人への敬意と尊厳を守るために、専門スタッフによって丁寧に行われます。ここでは、その具体的な手順について解説します。 医療器具の抜去と排泄物の処理 まず、ご遺体に装着されている医療器具や管類を抜去します。その際、創部からの出血や体液の漏出に注意が必要です。次に、ご遺体の口腔内や鼻腔、気管内の分泌物を吸引し、清拭します。また、排泄物や胃内容物などを適切に処理し、ご遺体を清潔に保ちます。 ご遺体の清拭と口腔ケア ご遺体全体を温かいタオルで丁寧に清拭し、汚れや体液を取り除きます。特に、顔や手足、陰部などは入念に行います。口腔内は、歯ブラシや綿棒を用いて清掃し、義歯を装着している場合は、洗浄後に装着します。 着替えと整容・化粧 ご遺族の意向を伺いながら、ご遺体に着せる衣類を選びます。下着から順に、しわや乱れがないように丁寧に着せていきます。髪は、故人の生前の髪型を再現するように整えます。男性の場合は、ひげ剃りも行います。化粧は、生前の写真などを参考に、自然で穏やかな表情になるように施します。 以上が死化粧・エンゼルケアの主な手順ですが、ご遺族の意向に沿って、柔軟に対応することが大切です。故人とご遺族に寄り添い、心を込めて行うことが、死化粧・エンゼルケアの本質といえるでしょう。 死化粧・エンゼルケアの手順内容1.医療器具の抜去と排泄物の処理医療器具の抜去、分泌物の吸引、排泄物の処理2.ご遺体の清拭と口腔ケア全身の清拭、口腔内の清掃、義歯の装着3.着替えと整容・化粧衣類の着せ替え、髪型の整え、ひげ剃り、化粧 死化粧・エンゼルケアと類似サービスの違い ご遺体に対するケアには、死化粧・エンゼルケアの他にも、湯灌(ゆかん)やエンバーミングなどの方法があります。それぞれの特徴や違いを理解することで、故人とご遺族の意向に合ったサービスを選択することができます。 死化粧・エンゼルケアと湯灌の違い 湯灌は、ご遺体を湯船に入れて、体を拭き清める伝統的な方法です。仏教の儀式として行われることが多く、故人の魂を清めるという意味合いがあります。一方、死化粧・エンゼルケアは、現代的な方法で、ご遺体を清潔にし、整容・化粧を施すことに重点を置いています。湯灌と比べると、儀式的な要素は少なく、故人の尊厳とご遺族の心情に配慮したケアといえます。 死化粧・エンゼルケアとエンバーミングの違い エンバーミングは、ご遺体に薬剤を注入し、腐敗を防ぐ処置です。主に、海外へ搬送する際や、長期間の保存が必要な場合に行われます。死化粧・エンゼルケアは、あくまでご遺体を清潔にし、見た目を整えることが目的であり、腐敗防止処置は含まれません。エンバーミングは、医療行為に近い専門的な処置であるのに対し、死化粧・エンゼルケアは、故人とご遺族に寄り添うケアといった側面が強いといえるでしょう。 ご遺族の意向に合わせたサービス選択 死化粧・エンゼルケア、湯灌、エンバーミングは、それぞれ目的や方法が異なります。大切なのは、故人とご遺族の意向に沿ったサービスを選択することです。宗教的な背景がある場合は、湯灌を好まれる方もいらっしゃいます。一方、故人の生前の姿に近づけることを重視する場合は、死化粧・エンゼルケアが適しているでしょう。エンバーミングは、特殊な事情がある場合に限られます。 葬儀社や斎場のスタッフと十分に相談し、故人とご遺族にとって最良の選択をすることが大切です。 サービス目的特徴死化粧・エンゼルケアご遺体の清拭、整容、着替え故人の尊厳とご遺族の心情に配慮湯灌ご遺体を湯船に入れて清める仏教の儀式として行われることが多いエンバーミングご遺体の腐敗を防ぐ海外搬送や長期保存の際に行われる 死化粧・エンゼルケアの料金相場と依頼方法 死化粧・エンゼルケアは、故人とご遺族に寄り添う大切なサービスですが、料金や依頼方法について不安を感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、死化粧・エンゼルケアの費用の目安や、病院で行う場合の料金、葬儀社への依頼方法と注意点について解説します。 死化粧・エンゼルケアの費用の目安 死化粧・エンゼルケアの料金は、依頼する業者や施設、サービス内容によって異なります。一般的な目安としては、以下のようになります。 エンゼルケア(死化粧):10,000円〜30,000円 湯灌を含むプラン:50,000円〜100,000円 ただし、これはあくまで目安であり、追加のオプションサービスを利用した場合や、地域によっても料金は変動します。 病院で行う場合の料金 病院で死化粧・エンゼルケアを行う場合、料金は比較的リーズナブルになる傾向があります。看護師や病院スタッフによるエンゼルケアの場合、3,000円〜15,000円程度が相場です。ただし、病院によってはサービスを提供していない場合や、死化粧は行わず、簡単な整容のみというケースもあります。事前に病院の方針を確認しておくことが大切です。 葬儀社への依頼方法と注意点 葬儀社に死化粧・エンゼルケアを依頼する場合は、以下の点に注意しましょう。 提供しているサービス内容と料金を確認する スタッフの経験と技術を確認する ご遺族の意向をしっかりと伝える 納得のいく費用の見積もりを取る 葬儀社によっては、プランに死化粧・エンゼルケアが含まれている場合もありますが、別途料金が発生するケースが多いです。ご遺族の意向を踏まえ、必要なサービスを選択することが重要です。また、スタッフの技術や経験も重要な要素ですので、事前に確認しておくとよいでしょう。 死化粧・エンゼルケアは、故人とご遺族にとって大切な意味を持つサービスです。料金や依頼方法に不安を感じる方も多いかもしれませんが、事前の情報収集と、ご遺族の意向を尊重することで、より良いお別れの時間を迎えることができるはずです。 まとめ 死化粧・エンゼルケアは、亡くなった方のご遺体に対し、清拭や着替え、整容などを行うことで、故人の尊厳を守り、ご遺族の心情に寄り添うためのサービスです。医療器具の抜去や排泄物の処理から始まり、ご遺体を丁寧に清め、生前に近い姿に整えていきます。湯灌は伝統的な儀式であるのに対し、エンバーミングは腐敗防止が目的であり、それぞれ死化粧・エンゼルケアとは異なります。料金は内容により異なりますが、病院で行う場合は3,000円~15,000円程度が目安です。葬儀社へ依頼する際は、サービス内容や料金、スタッフの技術を確認し、ご遺族の意向を伝えることが大切です。

葬儀・葬式ご臨終・葬儀の準備 2024.06.07
納棺とは?手順や費用を解説・エンバーミングとの違い

納棺とは?手順や費用を解説・エンバーミングとの違い

大切な人を亡くした喪主にはやらなければならないことが次々と押し寄せ、心が休まる間もないかもしれません。そんな中でも、故人との最後のお別れの儀式である「納棺」は、とても大切な意味を持っています。しかし、納棺とはどのような儀式なのでしょうか。また、どのような手順で行われ、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。本記事では、納棺について詳しく解説するとともに、よく混同されるエンバーミングとの違いについても触れていきます。故人を心を込めて送り出すためにも、ぜひ参考にしてみてください。 納棺とは何か 納棺とは、故人の遺体を棺に納める儀式のことです。亡くなった方を清め、あの世への旅立ちに向けた準備を行い、大切な副葬品とともに棺におさめるという、葬儀の中でも重要な儀式の一つとなります。 納棺の定義と目的 納棺の主な目的は、以下の通りです。 故人の遺体を清め、あの世への旅立ちに備えること 遺族が最後のお別れをすること 副葬品を棺に納め、故人の旅立ちを助けること 納棺の手順は、宗教や地域によって多少の違いはありますが、一般的には以下のような流れで行われます。 手順内容1. 末期の水亡くなる直前に口元に水を含ませる儀式2. 湯灌(ゆかん)遺体を清め、着替えさせる3. 死化粧故人の顔に化粧を施す4. 死装束の着付け納棺用の衣装に着替えさせる5. 副葬品の納め棺に思い出の品などを一緒に納める これらの一連の儀式を通じて、故人はあの世へと旅立つ準備が整えられるのです。 納棺を行うタイミングと立ち会う人 納棺は通常、通夜の前に行われます。立ち会う人は、故人の近親者が中心となりますが、親しい友人や職場関係者など、故人と近しい間柄の方が参列することもあります。 参列者は原則として喪服を着用し、厳粛な雰囲気の中で故人を見送ります。近親者は泣き崩れる方も少なくありませんが、それもまた故人への深い愛情の表れと言えるでしょう。 宗教による納棺の違い 納棺の具体的な方法は、宗教によって異なります。 仏教では、死装束は白い着物か経帷子(きょうかたびら)を着せることが多い。 キリスト教では、納棺時に十字架を棺に入れることがある。 ただし昨今は、宗教にこだわらず故人の好物や思い出の品を納める例も増えています。枕元に花や写真を飾り、棺には手紙やぬいぐるみ、菓子などを入れるご家族もいらっしゃいます。大切なのは、故人とのお別れの儀式という納棺の本質を踏まえつつ、故人らしさが感じられる納め方をすることではないでしょうか。 以上が納棺の基本的な知識となりますが、大切なのは納棺を通じて、亡き人との最後の時間を過ごすことです。心を込めて故人を送り出し、悲しみを乗り越えていければと思います。 納棺の手順 納棺は、故人をあの世へ送り出す大切な儀式です。ここでは、一般的な納棺の手順について詳しく解説していきます。 末期の水と湯灌(清拭) 納棺の第一段階は、「末期の水」と呼ばれる儀式から始まります。これは、臨終間際の方の口元に水を含ませ、最期の瞬間を清めるという意味合いがあります。 続いて、遺体を清める「湯灌(ゆかん)」の儀式が行われます。湯灌では、白湯や清水で遺体を丁寧に拭き、汚れを落とします。この際、故人の髪の毛や爪なども整えられます。近年は、湯灌を省略したり、家族のみで行ったりするケースも増えています。 死化粧と死装束を着せる 遺体が清められた後は、「死化粧」が施されます。生前の故人の姿に近づけるよう、メイクが施されるのです。死化粧は、専門の納棺師が行うのが一般的ですが、家族の手によって行われることもあります。 化粧が終われば、いよいよ死装束を着せます。死装束は、故人があの世へ旅立つ際の正装とされています。宗教によって異なりますが、仏教では白装束や経帷子、神道では白い着物や帷子と麻の帯を使うことが多いようです。 副葬品を納める 納棺の最後の段階は、棺に副葬品を納めることです。副葬品は、故人にゆかりのある品や、あの世での生活に必要と考えられるものが選ばれます。 よく見られる副葬品としては、以下のようなものがあります。 数珠や経典(仏教) 十字架やロザリオ(キリスト教) 折り紙で作った花や鶴 故人の思い出の品(写真、手紙、ぬいぐるみなど) 故人の好物(菓子、酒など) 副葬品を納め終われば、いよいよ棺のふたを閉じます。直接手を合わせて最期のお別れをした後、棺に納めた故人は、通夜や告別式、火葬へと送られていくのです。 以上が一般的な納棺の手順となります。故人との最後の時間を過ごす、とても大切な儀式です。宗教や地域、家庭によって多少の違いはあるものの、故人を丁寧に清め、あの世へ送り出すという思いは共通しているのではないでしょうか。 納棺に必要な費用 納棺に必要な費用は、大きく分けて湯灌(ゆかん)、死装束、死化粧の3つの項目があります。ここでは、それぞれの費用の相場と、オプションについて解説していきます。 湯灌にかかる費用 納棺の第一段階である湯灌は、遺体を清め、汚れを落とす重要な儀式です。湯灌にかかる費用は、地域や葬儀社によって異なりますが、おおむね5万円から15万円程度が相場となっています。 最近は、家族のみで湯灌を行う「家族湯灌」も増えています。費用を抑えたい場合は、家族湯灌を選ぶのも一つの方法です。ただし、遺体に触れる作業となるため、心構えが必要となります。 死装束の費用 湯灌の後は、死装束を着せる段階となります。死装束の費用は、素材や デザインによって大きく異なります。 比較的安価なものだと数千円程度で購入できますが、高級な絹製のものになると数万円から10万円以上するものもあります。死装束は、故人があの世へ旅立つ際の正装と考えられているため、故人の好みや信仰に合わせて選ぶことが大切です。 最近は、死装束のレンタルサービスを行っている葬儀社もあります。購入するよりは費用を抑えることができるので、検討してみるのもよいかもしれません。 その他オプションの費用 納棺には、湯灌や死装束以外にもオプションがあります。 例えば、「死化粧」は、専門の納棺師が施す特殊なメイクです。生前の面影を再現するため、別途料金が発生します。対面式の葬儀であれば、死化粧は欠かせませんが、最近は家族のみで行う「お見送り化粧」を選ぶ方も増えています。 また、納棺に立ち会う人数が多い場合は、式場使用料や、ドライアイスの費用など、別途料金が発生することがあります。事前に葬儀社に確認しておくことをおすすめします。 以上のように、納棺にかかる費用は、地域や葬儀社、オプションの有無によって大きく異なります。事前に疑問点を解消し、故人にふさわしい納棺を行えるよう、準備を進めていきたいものです。 納棺とエンバーミングの違い 納棺とよく混同されるのが、「エンバーミング」という言葉です。エンバーミングとは、遺体の腐敗を防ぐための防腐処理のことを指します。主に欧米で行われている習慣で、日本では一般的ではありません。ここでは、エンバーミングの定義や目的、納棺との違いについて詳しく解説していきます。 エンバーミングの定義と目的 エンバーミングとは、遺体の血液を抜き取り、防腐剤を注入することで、一時的に遺体の腐敗を防ぐ処理のことです。エンバーミングが施された遺体は、数日から数週間は腐敗することなく保存することができます。 エンバーミングの主な目的は、以下の通りです。 遺体を衛生的に保つこと 遺体の容姿を整えること 感染症のリスクを減らすこと 葬儀までの間、遺体を安置できるようにすること つまり、エンバーミングは遺体の一時的な保存が目的であり、遺族の感情的な面というよりは、実用的な側面が強いと言えます。 納棺との手順や内容の違い エンバーミングと納棺は、遺体に対する処置という点では共通していますが、その目的や手順、内容は大きく異なります。 納棺が故人を清め、あの世へ送り出すための儀式であるのに対し、エンバーミングは遺体の一時的な保存が主な目的です。納棺では湯灌や着替えなどの儀式的な要素が強いのに対し、エンバーミングは医療的・科学的な処置が中心となります。 また、エンバーミングは専門の資格を持った「エンバーマー」によって行われるのが一般的です。血液を抜き取り、防腐剤を注入する工程には、一定の知識と技術が必要とされるためです。一方、納棺は葬儀社のスタッフや遺族によって行われることが多く、特別な資格は必要ありません。 納棺エンバーミング目的故人を清め、あの世へ送り出すこと遺体の一時的な保存主な内容湯灌、着替え、化粧など血液の入れ替え、防腐剤の注入など執り行う人葬儀社スタッフ、遺族など専門の資格を持ったエンバーマー所要時間1〜2時間程度数時間〜十数時間 このように、エンバーミングと納棺は、遺体に対する処置という点では共通していますが、その目的や内容は大きく異なっています。日本で一般的に行われているのは納棺であり、エンバーミングはまだ一般的ではありません。 エンバーミングのメリットとデメリット エンバーミングにはメリットとデメリットがあります。メリットとしては、以下のような点が挙げられます。 遺体を衛生的に保つことができる 故人の容姿を整えることができる 感染症のリスクを減らすことができる 葬儀までの間、安置することができる 特に、死因が感染症だった場合や、海外から遺体を送還する場合など、遺体を一定期間保存しておく必要がある場合には、エンバーミングが有効な手段となります。 一方でデメリットとしては、以下のような点があります。 処置に時間と手間がかかる 費用が高額になる場合がある 環境への負荷が大きい(防腐剤の使用など) 故人への最後の別れという意味合いが薄れる 日本では、遺体を長期間保存する習慣がないため、エンバーミングの必要性は低いと言えます。むしろ、故人との最後の別れを大切にする文化的背景から、納棺が一般的な習慣として定着しているのです。 ただし近年は、グローバル化の影響もあり、エンバーミングを取り入れる葬儀社も徐々に増えてきています。宗教や文化、故人や遺族の意向を踏まえつつ、ケースバイケースで適切な方法を選択することが大切だと言えるでしょう。 以上、納棺とエンバーミングの違いについて解説してきました。エンバーミングは欧米では一般的な習慣ですが、日本ではまだ浸透しているとは言えません。納棺とエンバーミング、それぞれの長所を理解した上で、故人や遺族にとって最良の方法を選択していくことが肝要ではないでしょうか。 まとめ 納棺は、亡くなった方の体を清め、あの世への旅立ちの準備を整える大切な儀式です。湯灌で体を清め、死装束を着せ、副葬品を棺に納めることで、故人を心を込めて送り出します。一般的な納棺の費用は、湯灌で5〜15万円、死装束で数千円〜数万円程度かかり、ご希望により死化粧も追加料金で行うことができます。一方、エンバーミングは欧米で行われる防腐処理で、遺体の一時保存を目的とした医療的処置です。日本では馴染みが薄く、あくまで故人のお見送りが目的の納棺とは異なります。

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